教育系企業勤務→IT営業を経て、30代を目前に3つめのキャリアとして小学校教員を選んだ話。〜赴任中の七転び八起きと今後のビジョン〜
- 修了生インタビュー
今回は、大学で小学校教員免許を取得後、教育系企業・IT企業での勤務を経て、30代を目前にTeach For Japan(以下、TFJ)のフェローとして小学校教員になった友広瑞来さんにご登壇いただきました。教育実習でのつまずきから民間就職を選んだ経緯や、赴任中に子どもたちと向き合いながら重ねた試行錯誤、そして今後思い描くビジョンまで、率直に語っていただいています。ぜひ最後までご覧ください。(※本記事は、2025年6月に行われたイベントのレポートです。)

友広瑞来さん(Teach For Japan フェロー第11期生/小学校赴任)
大学は教員養成学部に通い、教員免許を取得。だが大学時代の教育実習にて、自身のリーダーシップの弱さを実感し、社会人経験を積んでから教員になる道を選んだ。ファーストキャリアは教育業界の企業で総合職、セカンドキャリアはITスタートアップ企業で営業を経験。その後長期的に教員として働くことを視野に、Teach For Japanのフェロー第11期生として埼玉県の小学校で勤務。現在は、千葉県の小学校教員として第3学年を担任している。
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「私の方が面白い授業ができる」と思っていた子ども時代
―教員養成の学部への進学を決めたきっかけは何だったのでしょうか。
理由は大きく2つあります。1つは自分自身の原体験です。結構飽き症な性格で、小学校・中学校の頃は「閉じ込められている」という気持ちが強く、毎日の授業もあまり面白くないと感じていました。どう暇をつぶしていたかというと、「この授業なら自分ならこう教えるのに」ということをずっと考えていたんです。小学5、6年生の頃からそうでした。
もう1つは、進路を決める段階での理由です。安定志向な性格から手に職をつけたいという気持ちがありました。
「現場の先生と合わないかも」教育実習でのつまずき
―大学4年間はずっと教員になろうと考えていたのでしょうか。
実は3年生の時点でも、教員になるかどうかを決めきれずにいました。ICT関係も好きでIT企業にも行きたい一方、せっかく免許を取って親からの期待もあったので、ファーストキャリアで先生をやるのかなという感じでした。
そんな中、3年生の9月頃の教育実習で、大学附属の小学校で模擬授業をしたところ、現職の先生から厳しいご意見をいただきました。今思えば授業の準備も発問もひどかったのですが、当時は自分の方が面白い授業ができると思っていたくらいだったので、慢心が態度ににじみ出てしまっていたのだと思います。授業を受けるのも困るのも子どもたちなので、自分をパワーアップさせてから教壇に立ちたいと思うようになりました。
―民間企業での経験はどのようなものでしたか。
新卒で入ったのは、保育園を運営し自社の保育園向けICTソフトも扱う会社です。総合職として経理や人事なども含めて2年半ほど経験しました。ただ、営業だけは担当できなかったので、次は創業3年目くらいの営業色の強いIT企業に転職し、1年半ほど営業として働きました。ノルマをコンスタントにクリアできるようになり管理職を目指す話も出てきたのですが、5年、10年頑張るのかと思うと、既に経験を積ませてもらったタイミングでもあったので、次に進もうと考えました。
2年間という区切りがあるからこそ挑戦できた
―教員免許をお持ちなので、フェローにならなくても教員になれたと思います。それでもTFJのフェローシップ・プログラムを選ばれたのはなぜだったのでしょうか。
理由は2つあります。1つ目は2年間という区切りがあることです。教育実習の経験から、周囲の先生方とうまく関係を築けるだろうかという不安が自分の中にあったので、2年くらいならなんとか頑張れるかなというのがありました。正規採用でいきなり入って途中でやめれば周りに迷惑をかけますし、一度やめると次に教員になりたいと思った時に信頼度を落としてしまうのではとも思っていました。だったら、まずやってみて無理だったら民間に戻る、できそうだったら正規として試験を受ける、という考え方でした。実習で打ちのめされた自分が、今は子どもたちの前に立っても大丈夫な人間なのか、確かめたかったというのが近いと思います。
2つ目は赴任前の研修です。正規採用だと現場に立ちながら慣れていく側面が強いのかなと思っていました。私は大学での学びから4、5年ブランクが空き、今の先生方の働き方もSNSでしか見られない状態でしたし、自分が授業をするのも久しぶりでした。現場の先生方と対面する「1日目」、子どもと出会う「1日目」、それぞれの「1日目」にしっかり備えたいと思い、事前研修がしっかりしているところで教員になりたいと考えました。
多様なバックグラウンドの仲間との模擬授業、「ビジョンがコロコロ変わった」研修時代
―赴任前研修を受けてみていかがでしたか。
研修はオンラインとオフラインの両方があり、印象に残っているのはオフラインの対面研修です。東京会場に何十人か集まって、例えば3年生の算数のある単元で共通して模擬授業をしてみようという内容があり、ありがたい経験でした。ICTが得意な方はバリバリ使った実践をしていたりと発問の仕方にも個性が出ていて、こういう風に聞けば分かりやすいのかとイメージしやすかったです。
教職課程での模擬授業は同い年の学生同士か、プロの先生の授業を見るかのどちらかだったので、多様なバックグラウンドの人たちと切磋琢磨できる環境は、大学時代とは違う新鮮さがありました。
もう1つ印象に残っているのは、オンライン研修で自分自身のビジョンを考え、色々な方と共有しながら深めていく時間です。私は結構ビジョンがコロコロ変わりました。「私のビジョンはこうじゃないかな」と思っていても、質問されて考えてみると「こっちの方が近いかも」という気づきがあり、対話していく中で変化がありました。他の人と話し合うことで、色々な方の良いところを吸収しながら、最終的に自分のビジョンを作り込めたのかなと思っています。
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TFJのオンラインイベントを見てみる赴任時の思い「話し合いで解決できる教室」
―赴任した時点では、どんな思いを持たれていたのでしょうか。
研修中にスライドに書いていた自分のビジョンを見返してみたのですが、赴任した時点の私には「話し合いで解決できる」というところにこだわりがすごくありました。実現したい世界、育てたい子ども像、実現したい教室という切り口で研修では考えていましたが、世界像や子ども像はあまりピンと来ていませんでした。ただ、教室だけは「話し合いで解決できる教室」がいいなと思っていました。子ども同士はもちろん、保護者と私、教員同士など、いろいろな関係性を含めて話し合いで解決できるというのが私のビジョンでした。
このビジョンは、学校現場から世界平和の実現を目指す方に出会って、その方の考え方に影響を受けています。その方は教室の現場から世界平和を実現したいと言っていて、トラブルの行きつく先は戦争だと考えていました。話し合いで解決できずに武力に行き着いてしまったものが戦争だという話を聞き、私も確かにそうかもしれないと感じました。問題の種の段階で話し合いによって解決できる人たちを育てられれば、それぞれが自分自身で幸せをつかみ取っていけるようになり、個人の自己実現が世界にも広がっていくのではないか、という考え方でした。
―赴任中の2年間、それぞれどんなクラスを担当されたのでしょうか。
1年目は小学1年生の担任でした。学年は4クラスあり、そのうちの1クラス26名を担任しました。2年目はそのまま持ち上がって2年生を担任しましたが、転出が多くクラスが4つから3つに減り、クラスサイズも当時の最大である35名になりました。クラス替えもあり、持ち上がりというより雰囲気から一緒に作り直すという感じでした。
「クレヨンが泣いてるよ」子どもの声かけに助けられた瞬間
―赴任中、大変だったこと、悩んだことについても伺えますか。
1年目、私が受け持ったクラスには、保育園から特別な支援の必要性が検討されていた児童がいました。気持ちの切り替えや相手との距離感に特性があり、感情が大きく揺れると、自分で落ち着きを取り戻すまでに時間がかかることもありました。
特に印象に残っているのは5月、私がその感情の高まりにうまく対応しきれず、その子が泣きながら廊下を走っていってしまったことです。私も泣きたい気持ちで追いかけました。それを他のクラスの先生が受け止めてくれました。特別支援の知識はあったつもりでしたが、1人1人違うので、対応は本当に難しかったです。
―そうした状況に、どのように向き合っていかれたのでしょうか。
本当に周りに助けてもらいました。1年生には大体クラスに1人ほど支援員さんがついていたのですが、最初の1か月は私のクラスに専属でついてもらい、支援員さんがその子に寄り添い、私はクラス全体を進めるという体制が取れたのがありがたかったです。
子どもの力にも助けられました。ある時、水のみ場でその子がクレヨンをぐちゃぐちゃにしてしまい、私がどう声をかけようか迷っていたところ、別のある子が「クレヨンが泣いてるよ」と声をかけていました。私だったら「やめな」と言ってかえってその子の気持ちを高ぶらせてしまっていたと思うので、むしろ子どもに助けてもらったなと感じました。
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TFJのオンラインイベントを見てみる「ここまで変わるんだ」現場で体感した子どもの成長

―2年間全体を通して、力を入れたことについて教えてください。
1年目は学級活動に力を入れていました。お笑い係を作ったり、塗り絵を作ってもらったりと、好きなことを生かせる活動を意識していました。学級会でみんなで決めるということもやってみたくて、「夏祭りをやります、1人ではお店を開けません」と伝え、2人以上でお店を開くルールで実践してみました。自分たちで自分も他の人も楽しいものを作ってみようという企画でした。話し合えば当然トラブルも起きるので、その解決方法も一緒に学んでいきたいという思いから、こうした活動を多めに取り入れていました。
―特に印象に残っている子どもの姿があれば、教えてください。
特に印象に残っているのは、2年生の時に担任した、ある児童のエピソードです。その子は1年生の時に別のクラスでトラブルがあり、学校に来られなくなるほど状況が複雑になり、保護者間の話にまで発展していました。2年生で私が担任をした当初は、話し合いをしようとしても話を聞いているうちにいなくなってしまい、なかなか話し合いそのものが成り立たない状態が続きました。
対応としてその子には、通常学級に通いつつ、関心ある活動をしたりコミュニケーションや対人関係に関する支援を受けたりできる「通級指導教室」に、週1回程度通う形を取ってもらいました。私も特別支援コーディネーターの先生に毎日のように相談をする日々でした。この取り組みによって、9月頃には話合いの場にいられるようになり、11月頃には自分が嫌だったことを言えるようになりました。その後、相手の話を最後まで聞き、最終的には自分の行動を受け止め、「なぜそうしたのか」という理由まで話せるようになり、「ここまで変われるのか」と感じました。
「教員の仕事、面白かったから」正規採用への道
―この2年間を振り返ってどのような変化があったと感じていますか。
まず「2年間頑張るぞ」と決めきれたことが大きかったです。挑戦できたことで、周囲の先生方とうまく関係を築けるだろうかという不安も払拭されました。1年目、2年目は本当にいろいろな方に助けていただいたという実感があります。SNSでは「教員は大変」「こういう指導は無理」といったネガティブなイメージが多かった一方で、私が行かせていただいた現場は、保護者の方も子どもたちのためにという思いが強い方が多く、先生方も忙しい中で助けてくださる方ばかりだったので、教育現場のイメージが大きく変わりました。
―正規採用として教員を続けようと決められた背景についても伺えますか。
一言で言うと、教員の仕事が面白かったからです。子どもたちと接していて飽きることがありません。小学校の先生はいろいろな教科を教えられるので、算数で一緒に問題を作ったり、理科で実験をしたり、図工や音楽など、本当にいろいろなことを楽しめるのが大きいです。
IT企業の営業も面白かったのですが、自分の成果を上げることが本当にお客様の長期的なメリットになるのかと感じる場面もありました。教員として子どもたちと接する上では、子どもたちにとって良いと思えることを学習指導要領と照らし合わせながら実行できる環境が、とても良いと感じています。
また、収入面だけで言うと、IT企業の方が少し条件が良かったのですが、収入と勤務のバランスをどこで取るかを考えた時に、教員は自分に合っていると感じました。
―今後の展望についても伺えますか。
大学時代に訪れたオランダの学校の取り組みが印象に残っています。保護者の方が気になっている社会問題などを100問ほど棚に用意しておき、子どもたちが好きな問題を選んで調べ学習をするという独自の取り組みで、自分もいつかやってみたいと思っています。
長期的には、管理職が何を問題としどう対応するかで働き方も子どもたちの学びも左右されると感じているので、そうした可能性のある管理職にも挑戦してみたいと思っています。
Q&A
Q:正規採用ではなくTFJ経由で現場に行くと、何が変わるのでしょうか。
TFJというよりは、臨時採用と正規採用という形で違いがあったと思います。実際にTFJで赴任していた時は「TFJです」と名乗っていたわけではなく、臨時採用の先生という扱いでした。臨時採用の場合、新任者が受けられる研修は、正採用一年目で受ける初任者研修と比べて少なかったので、そこをTFJの研修で補っていただいた感じです。今、初任者採用1年目ですが、1か月に1回ほど教育委員会主催の集合研修やオンライン研修があり、これは臨時採用の時にはなかったものです。
―最後に、応募を検討している方へメッセージをお願いします。
学校現場、今3年目なのですが、本当に飽きることなくとても面白いというのが正直なところです。ぜひこの面白さをいろいろな方と共有したいなと思っています。あとは、学校にはネガティブなイメージを持たれることもありますが、もっといろいろな方にポジティブに見ていただけたら嬉しいなと思います。
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