活動レポート report

模擬授業と対話で「より良い授業」と「学び続ける仲間」を考える~赴任前集合研修レポート

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2026年7月4日、Teach For Japan(以下TFJ)フェローシップ・プログラム第15期生を対象とした赴任前集合研修を実施しました。

TFJの赴任前研修では、赴任後の教室実践を見据えながら、学習科学の視点に基づき、子どもを学習者の中心に置いた授業づくりや、学び続ける教師としての姿勢を育むことを大切にしています。
今回の集合研修では、模擬授業と対話を通して「より良い授業」とは何かを考えること、そしてコミュニティがこれからどのような学びの場になっていくことが必要かを見つめることをテーマに、一日を通して学びを深めました。

対話から始まる一日

研修は、“参加者同士で今の気持ちを共有する”チェックインからスタート。
TFJの研修では、知識や技術を一方的に受け取るのではなく、学習者同士の相互作用を通して学びを深めることを重視しています。
久しぶりに顔を合わせた同期同士が近況を共有する和やかな空気。
一日の学びを自分ごととして引き受ける、その準備から研修は始まっていきます。

模擬授業~大切なのは「うまくやること」ではなく、改善し続けること

TFJでは、授業を「教育の目的のもと、教師によってデザインされる教育活動」と捉えたうえで、授業づくりにおいて大切なのは一度でうまく授業をすることではなく、改善のサイクルを回し続けることだと考えています。模擬授業は、そのための“現在地を知る機会”として位置づけられています。

参加者は、授業者として模擬授業を行うだけでなく、学習者役として授業に参加する立場にもなります。
学習者役になりきることで、授業を「教える側」だけではなく「学ぶ側」から捉え直し、児童生徒理解へとつなげていく――。そんな視点も、このセッションの重要なポイント。

教室では、授業者が当日まで磨きを重ねてきた授業を実際に行い、学習者役はその授業に向き合います。
授業者は、自分が設計した問いや活動を子どもたちにどう届けるかに真剣に向き合い、学習者役の参加者もまた、「この子ならどう受け止めるか」「どこで迷うか」「どんな反応を返すか」を考えながら、本気で授業に参加していきます。

この日も、授業者と学習者役の双方がそれぞれの立場から授業に向き合い、よりよい授業への気づきを得ていく時間となりました。 

対話を通して考え続ける「より良い授業」

模擬授業の後には、グループごとに対話を行い、「現時点でのあなたのより良い授業のポイントを考えよう」という問いについて意見を交わしました。

そこで議論されたのは、授業の細かな技術や工夫だけではありません。

「もっと読みたい、知りたいと思わせる導入とは何か」
「教師が“コントロールを手放す”とは、実際にはどういうことか」
「学習者にとっての“良い授業”は、誰にとって、どんな状態を指すのか」

模擬授業直後の熱を帯びたまま交わされる対話は、正解を探すのではなく、それぞれが抱いた違和感や気づきを言葉にしながら、授業観そのものを揺さぶり合う時間になりました。

授業は、「子どもがどう学ぶか」を中心に考えることが大前提。それでも、実際に授業をつくるなかでは、主語が「教師」に傾いてしまうこともあります。

「教師がすべてを説明しなくても、子ども自身が気づいたり、考えたりできる授業にしたい」
「一人ひとりの子どもの理解や興味に応じて、学び方の入り口を複数つくりたい」
「子どもの変化や、考えが深まっていく過程そのものを大切にしたい」

そんな参加者たちの言葉からは、自らの視点を見つめ直し、改めて“子ども主体”の原点に立ち返るための大切な時間となっていることがうかがえました。

コミュニティセッション~TFJコミュニティは、自分たちに何をもたらしてきたのか

研修後半のコミュニティセッションでは、視点を「授業」から「仲間との学び」へと移し、15期コミュニティが自分たちにどんな変化をもたらしてきたのか、そしてこれからどんなコミュニティを目指したいのかを考えました。

最初のワークのテーマは、「このコミュニティで自身はどう変化したか?」。
参加者からは、次のような変化が伝えられました。

「“正解を書かなければいけない”という感覚が緩み、自分がどうありたいかを考えられるようになった」
「完璧にやろうとする自分目線から、子どもたちの目線へと変わってきた」
「モヤモヤや“わからない”を、そのまま言葉にできるようになった」

ここで語られていたのは、単に「研修を受けて知識が増えた」という変化ではありません。
教師としてどうありたいか、自分は何を大切にしたいのか、子どもをどんなまなざしで見たいのかといった、より根っこの部分の変化でした。

では、そうした変化は何によって生まれたのでしょうか。
参加者たちは、その要因として、こんなことを挙げていました。

  • 何を言っても否定されない心理的安全性
  • 自分にはなかった視点を投げかけてくれる他者がいたこと
  • 同じテーマについて、フラットな関係で話せること 

印象的だったのは、「安心安全」という言葉が、単に“やさしい場”という意味で使われていなかったことです。
そこには、お互いを甘やかすのではなく、率直に問い合いながら、それでも学び続けられる関係でありたいという意思が込められていました。

これから目指したいのは、「学び続け、変化し続けられるコミュニティ」

続くワークでは、「15期コミュニティを、今後どのようなコミュニティにしていきたいか」をテーマに対話が行われました。

そこで挙がったのは、たとえばこんなコミュニティ像です。

  • 「先生っぽさ」や、無意識に引き受けてしまう当たり前を問い直し続けられるコミュニティ
  • 自分の経験や引き出しを惜しみなく出し合えるコミュニティ
  • 多様性が尊重され、変化や変容を楽しめるコミュニティ

発言の中には、「現場で忙しくなると、自分のビジョンや初心を忘れそうになることがある」「だからこそ、思い出させてくれる仲間が必要だ」との声も。
“自身のビジョンや軸に立ち返る場所になった”という言葉は、現場を経験している多くの修了生からも挙がります。

コミュニティはフェローにとって単なる“つながり”にとどまらず、問いを交わし、経験を持ち寄り、ときに自分の原点に立ち返りながら、教師として学び続けていくための「ホームベース」として機能していくことになります。

一人で抱え込まないために。赴任前に「ともに学び続ける土台」をつくる

今回の集合研修は、模擬授業を通して授業づくりの現在地を知る時間であると同時に、これから赴任していく仲間とともに、どう学び続けていくかを確かめる時間でもありました。

より良い教育に、たった一つの正解があるわけではありません。
だからこそ、自分の実践を振り返り、子どもの姿から考え、他者との対話を通して見直し続けることが欠かせません。

TFJが赴任前研修で大切にしているのは、子ども主体の教育観を前提とした実践力だけでなく、現場に出たあとも学び続け、問い続けられる土台を育むことです。
今回の集合研修は、そうした学びの土台を、模擬授業や対話、コミュニティセッションを通して確かめていく時間にもなりました。 

多様な背景や経験を持つ候補生たちが、それぞれの想いを持ち寄りながら、子ども主体の学びと向き合う。未来の教育につながる気づきや問いが、この日の研修のあちこちにありました。TFJは、すべての子どもたちが輝く社会のために、これからも教師一人ひとりの歩みに伴走していきます。 

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