【異業種転職】居酒屋店長から教員へ。飲食業界出身者が語る、失敗だらけの2年間と学びのすべて
- コラム
この記事でわかること
- 居酒屋店長として5年間飲食業界で働いた後、教員に転職した中谷さんの体験談
- 研修や同期コミュニティに支えられながら、2年間、教師として学校現場に赴任するフェローシップ・プログラムという仕組み
- 赴任先では「失敗だらけ」だったと語るものの、そこで得た学びを糧に、現在も通信制高校で教員を続けている中谷さんの歩み
異業種からの転職に不安を感じている方、飲食業界での経験を教育の現場で活かしたいと考えている方に向けて、リアルな声をお届けします。
今回は、Teach For Japan(以下、TFJ)のフェローシップ・プログラムの第10期生で、現在は通信制高校で教員としてご活躍の中谷香央里さんに登壇いただきました。飲食業界の居酒屋店長から教育業界へ転職した理由、失敗だらけだったと自負する赴任先でのエピソード、現在も教員を続けている理由をまとめています。
▼YouTubeにて動画でもご視聴いただけます!
▼中谷さんのインタビューイベント記事全文はこちらから!
プロフィール:居酒屋店長5年→小学校教員2年→通信制高校教員へ
中谷香央里さん(フェロー第10期生/小学校赴任)
大学卒業後、一目惚れをした飲食の企業に入社。全国を異動しながら居酒屋店長として5年間働く。アルバイト教育に携わる中で、本格的に教育の世界に飛び込んでみたいと思うようになりTeach For Japanに応募。長崎県の小学校で2年間、3年生の担任・特別支援学級の担任を務める。失敗だらけの2年間だったが、環境に恵まれ充実した日々を過ごす。失敗続きだったからこそ教育の仕事を続けてみたい、多様な子どもたちの価値観にふれながら自分ができることを増やしていきたいと思い、現在は通信制高校で教員をしている。
Teach For Japanのフェローシップ・プログラムとは?
教員免許の有無を問わず、2年間、公立学校等に教員(フェロー)として赴任し、子どもたちと向き合うプログラムです。赴任前・赴任中の研修や、同期を含めた多様なバックグラウンドを持つ参加者同士のコミュニティがあることも特徴です。詳しい応募条件や活動内容はフェローシップ・プログラムのページをご覧ください。
居酒屋店長から教員を目指した理由
大学では国際関係学科に所属し、当初は国際的な仕事を志望していた中谷さん。在学中のボランティアで地方の魅力に触れ、「仕事を通して持続可能な地域づくりができたら」という思いから飲食業界に興味を持つように。就活で出会った企業の社員がイキイキ働く姿に一目惚れし、新卒で居酒屋の店舗運営に携わることになりました。
教育への関心自体は大学時代から持っていたものの、「新卒で教員になると企業へのキャリアチェンジが難しい」という先輩の助言もあり、まずは企業に就職。転職を考えるきっかけになったのは、居酒屋店長としてアルバイトスタッフの教育に携わる中で得た気づきでした。
自分の関わり方次第で、人はいかようにでも変わる。それを実感したことが、教育の奥深さに気づいたきっかけです。
高校生・大学生になるもっと前の段階で、多様な体験や変化を味わう機会を提供したい。そう考えるようになったことが、教員への転職を決めた理由です。
小学校教員免許の取得方法
中谷さんは大学在学中に中学・高校の教員免許を取得していましたが、小学校教員免許を持っていませんでした。その場合は、主に以下の方法で取得を目指せます。
- 大学の教職課程を履修する:教職課程のある大学(学部)に進学し、必要単位を取得する
- 通信制大学で取得する:社会人向けの通信制大学・通信教育課程を利用し、働きながら必要単位を取得する
- 小学校教員資格認定試験を受験する:文部科学省が実施する試験に合格することで、大学等に通わずに小学校教員免許を取得できる
- 臨時免許状・特別免許状を活用する:雇用先の自治体が発行する臨時免許状・特別免許状を活用すれば、教員として学校現場に立つことができる(有効期限あり)。Teach For Japanのフェローシップ・プログラムでも、この制度を活用している。
飲食業界からの転職。TFJを選んだ決め手とサポート体制
新卒から5年間勤めた会社にはやりきった感があり、異業種への転職に対する抵抗感は少なかったという中谷さん。「一生教員を続けるかは分からないが、2年間なら挑戦できる」という感覚が、TFJのフェローシップ・プログラムを選んだ一番の決め手でした。
異業種から教員になる主なルート
中谷さんのように教員免許を持っている場合、教員への転職ルートはいくつか考えられます。
- 教員採用試験を受験:教諭として長期的に働く前提で採用試験に挑戦する
- 常勤・非常勤講師:自治体の講師登録を行い、数ヶ月〜1年程度の有期雇用で教壇に立つ
- TFJのフェローシップ・プログラム:免許の有無を問わず2年間、公立小中学校に赴任を目指せる(雇用契約は自治体と締結)。赴任前・赴任中・修了後の研修や同期コミュニティによるサポートを受けながら挑戦できる
赴任前研修では、同期フェローがそれぞれの教育ビジョンを語り合う時間があり、「1年間ともに研修を過ごした同期の熱い想いに触れて、心が奮い立った」と振り返ります。
TFJならではのサポート体制
中谷さんは赴任1年目、指導がうまくいかず精神的に辛い時期があったそうですが、そのときに支えになったのが同期の現職フェロー(教員経験のあるフェローシップ・プログラム参加者)が開いてくれた朝活でした。実践的な助言を得たことで立ち直れたと振り返っています。未経験の業界に飛び込む上で「一人で抱え込まずに支え合える環境があるか」は、教員への転職を検討するうえで見落とせないポイントです。
赴任1年目の壁。「自己決定」と「放任」の違い
1年目に担任した3年生のクラスでは、指導がうまくできずクラスが落ち着かない状態を経験しました。
「子どもたち自身で自由に意思決定してほしい」という気持ちで接していたが、自分がしていたことは「放任」だったと感じた。子ども達が自己決定できるようになるには、放任するのではなく、その土台や環境を教師が作る責任があることに気づかされた。
宿題をやってこない、給食をほとんど食べない、廊下移動時に並ばない——そうした小さなサインを見逃さず、押さえるべきポイントで指導することの大切さを、身をもって学んだ1年目でした。
2年目に担任した特別支援学級では、保護者や放課後デイサービスの先生と連携しながら、生徒一人ひとりに合わせた教材づくりに注力。入学当初ひらがなの読み書きが難しかった生徒が、3学期に自分の力で物語を書き上げた場面は、中谷さんにとって忘れられないエピソードのひとつです。
教員を辞めずに続ける理由
失敗だらけだった2年間の赴任を終え、一度は教育業界を離れることも考えたという中谷さん。それでも「ここで終わっていいのか」という思いから、現在の通信制高校に活躍の場を移しました。
現職では、赴任先で課題だった「クラスの土台作り」に注力。教員の裁量権が大きく自由度の高い環境で、生徒の単位取得や進級、広報活動など成果が見えやすいこともやりがいにつながっているといいます。
教育現場で多くの子ども達を見てきた中で、「社会で生きていくためのしなやかな強さ」の重要性を感じています。子ども達がその強さを得るための手伝いができたらいいなと考えています。
居酒屋店長の経験が教師としての軸に活きている
- アルバイトの人材育成で培った「関わり方次第で人は変わる」という実感が、子ども一人ひとりへの向き合い方の原点になっている
- 就職時に家族から反対され、お客様からも仕事の選択を疑問視されることがあった経験が、「自分の軸で選択することの大切さ」を子ども達に伝える教育ビジョンの土台になっている
飲食業界での経験や、そこで向き合った葛藤は、決して教育現場と無関係ではなく、中谷さんの教師としての軸の土台になっていることがうかがえます。
転職を迷っている方へ
私は2年間本当に大変な思いをしたのですが、最後の離任式で子ども達が別れを惜しんでくれたことで苦労が全て吹き飛びました。私の未熟さによって子どもたちを傷つけてしまったこともたくさんあったかと思いますが、それでも子どもたちはまっすぐ私に向き合い続けてくれていたのだと気づかされ、子どもたちからの愛情をこれでもかと受け取ったような気がしました。この経験は衝撃的で、2年間頑張って良かったと心の底から思いました。
長崎という見知らぬ土地での生活でしたが、出会った人たちも子ども達との時間も、中谷さんにとって宝物になったといいます。挑戦するか迷っている方は、ぜひ一歩を踏み出してみてほしいとのメッセージをいただきました。
まとめ
居酒屋店長として5年間飲食業界でキャリアを積んだ中谷さんは、Teach For Japanのフェローシップ・プログラムを通じて教員へ転職し、失敗を重ねながらも子どもたちとの関わりの中で成長を続けています。異業種からの転職は不安がつきものですが、赴任前・赴任中の研修や、同期を中心としたコミュニティによる支えがあることで、一歩を踏み出しやすくなるという声があります。飲食業界をはじめ、異業種から教育の世界への転職を考えている方は、今回のような体験談を参考にしてみてください。
教師になることに興味がある方
詳しく知りたい